法定相続情報証明制度のメリット

 法定相続情報一覧図を作成、法務局に保管申請し、写しの交付を受けることで、どのようなメリットがあるでしょうか?

①法定相続人が誰かを法務局が審査するので、相続証明書としての信頼度が高い

 相続人ご自身が被相続人の出生から死亡までの除籍謄本等や相続人全員の戸籍謄本を収集したものの、すべて揃っているかどうか不安だ、というお話をよく耳にします。

 そのような場合、法定相続情報一覧図の保管の申出及び写しの交付の申出をすることにより、法務局の専門官が提出された戸籍謄本等をチェックして、被相続人の法定相続人が誰があるかを審査を行い、問題がなければそのまま審査が完了し、添付書類に不足がある場合でも一定の期間内に提出するよう連絡があり、その指示通りに戸籍謄本等を追加提出すれば、法務局の証明印が付された法定相続情報一覧図の写しを交付してくれます。

 この法定相続情報一覧図の写しは法務局のお墨付きをもらった書類ですので、相続証明書としての信頼度は高いと言えます。

②法定相続情報一覧図の写しを金融機関等に提出することで、相続手続にかかる時間を短縮できる

 戸籍謄本等をすべて揃えて、いざ銀行に行って提出したところ、ほとんどの銀行で「戸籍を全てコピーしてお返ししますので、しばらくお待ちください。」と言われます。
 提出した戸籍謄本等が5通ぐらいだとすぐにコピーし終わりますが、相続人が多かったり、きょうだいや甥姪が相続人だったりすると、相続に必要な戸籍謄本等は10通以上になりますので、結構待たされることになります。

 この場合、戸籍謄本の束の代わりに、法定相続情報一覧図を提出することで、銀行が戸籍謄本をコピーをする手間がないので、結果的に相続手続にかかる時間を短縮できることができます。

 なお、従来どおり戸籍の束を用いて相続手続を行うことはもちろん可能ですので、相続手続の件数が少ない場合は法定相続情報を作成しなくてもいいケースもあります。

③提出先が異なる相続手続を同時に行うことができる

 相続財産は不動産、預貯金、株式、自動車など多岐にわたりますが、それぞれ相続手続の申請窓口が異なります。

 被相続人の相続証明書として用意をした戸籍謄本等が1セットしかない場合、各財産の相続手続は1つずつ進めていかなければならず、手続きが完了するまでにかなりの日数を要します。

 法定相続情報一覧図の写しを各相続手続の件数分の枚数交付してもらうと、それぞれの相続手続を同時に進めることができ、結果的に相続手続にかかる時間を短縮できることができます。

 なお、相続税の申告(※)や遺族年金の請求の際の相続証明書として、法定相続情報一覧図の写しが添付することができるようになりましたので、さらに活用の場面が広がりました。

(※)法定相続情報一覧図の写しが図形式のものであり、かつ、子の続柄が実子または養子のいずれであるか分かるように記載されているものに限ります。
 列挙形式だと相続人の法定相続分の算出ができない場合があることと、相続税の非課税枠の算出について養子の人数が制限されているので、養子の人数を明らかにするためです。

法定相続情報証明制度の留意点

 このように、相続手続を進める際に大変便利な法定相続情報証明の制度ですが、制度が利用できないケースや一覧図作成の際の記載事項に細かいルールがあります。

①被相続人や相続人が日本国籍を有しない場合などは、この制度は利用できない

 被相続人や相続人が日本国籍を有しない場合は、法定相続情報の証明の制度は利用できません。
 また、たとえば、代襲相続(※)が発生しているが、被代襲者が死亡した記載のある除籍謄本を添付できない(保存期間経過による廃棄や戦争、震災などによる焼失、滅失など)などの場合も、現在の法定相続人を確定できないため、この制度の利用はできません。

(※)被相続人より前に被相続人の子やきょうだいが死亡しており、「孫」や「甥姪」が法定相続人になること

②法定相続情報一覧図には相続人の法定相続分を記載することができない

 法定相続情報一覧図に記載できる事項は決められており、相続人の法定相続分は記載できないこととなっております。仮に法定相続分を記載して法務局に申出をすると、余剰記載として訂正(削除)を求められます。訂正に時間がかかると、法定相続情報一覧図の写しの交付も遅くなり、結果的に財産の相続手続も遅れてしまいます。

③死亡している親族の氏名は記載されない

 相続手続の際に作成する「相続関係説明図」には、通常、被相続人が死亡する前に死亡した被相続人の配偶者や子なども記載しますが、これは被相続人の相続関係を分かりやすくすることが目的です。

 一方、法定相続情報一覧図はあくまでも「法定相続人は誰か」を証明するものですので、被相続人が死亡する前にすでに死亡している妻や子などの名前は記載されません。
 なお、氏名は記載しませんが、「夫」「妻」「父」「母」の続柄を記載することはできます。
 また、代襲相続の場合、死亡している被相続人の子やきょうだいについては「被代襲者」と記載します。

④相続放棄した人、相続欠格者の氏名が記載される

 法定相続情報は戸籍謄本等の記載に基づく法定相続人を明らかにするものでありますので、相続放棄をした人や相続欠格者(※1)については、戸籍に相続放棄をしたことや相続欠格者である旨が記載されないため、その方の氏名が法定相続情報一覧図に記載されます。
 そのため、実際の相続手続では法定相続情報一覧図の他に、相続放棄した人についての「相続放棄申述受理証明書」や相続欠格者についての「刑事裁判の判決書」などが必要です。

 一方、推定相続人の廃除(※2)があった場合は、戸籍に廃除の旨が記載されるため、戸籍の記載に基づいて作成される法定相続情報一覧図には廃除された人の氏名は記載されません。

(※1)被相続人または先順位・同順位相続人の殺害行為など、民法891条に規定される不正な事由(相続欠格事由)が認められる場合に、その者の相続権を失わせる制度。
(※2)
本人の推定相続人により本人に対して虐待・侮辱あるいは著しい非行があった場合、本人や遺言執行者が家庭裁判所への申立てることによって、本人の推定相続人の相続権を喪失させることができる制度。(民法892条、893条)

⑤法定相続人の住所を記載することで、不動産の登記に住所証明書として使用できる

 法定相続情報一覧図に相続人の住所を記載することは任意ですが、住所を記載することにより、不動産の相続登記を申請する際に相続人の住所証明書を兼ねることができます。なお、相続人の住所を記載するためには、申出の際に相続人の住所証明書(住民票、戸籍の附票等)の添付が必要です。

⑥被相続人の死亡時点に遡って相続人の範囲が変わるようなときは、再度申出が可能

一度、法定相続情報一覧図の保管の申出をした後、下記のような理由で被相続人の死亡時点に遡って相続人の範囲が変わるようなときは、当初の申出人は、再度申出をすることができます。

1)被相続人の死亡後に子の認知があった場合
2)被相続人の死亡時に胎児であった者が生まれた場合
3)法定相続情報一覧図の写しが交付された後に廃除があった場合