中小企業では社長(代表取締役)が会社の株式の全部又は大部分を所有している場合も多く、社長の力でここまで会社を大きくしてきたという自負があると思います。
しかし、社長が高齢になるにしたがって、判断能力が鈍ってきたり、ついには認知症になってしまうと、会社の重要事項を決める株主総会で議決権を行使できないようになり、会社の業務がストップしてしまう恐れがあります。

ケース4の事例のように、以前より自分の後継者として考えている長男に会社の議決権を持ってもらい、自身は第一線から退くものの、会社への影響力は持っていたい、また、会社が利益を上げたときには、その配当を受け取りたいという場合は、次のような信託契約をすることで実現できます。

①社長所有の自社株式を信託財産、社長を委託者兼受益者、長男を受託者とする信託契約をします。
株式の名義は長男に移り、株主総会の議決権は長男が100%持つことになりますが、株式から生まれる利益(剰余金の配当)は社長が引き続き受けます。

②社長の議決権は無くなりますが、判断能力があるうちは、株主総会での議決権を行使について指図できる権利を持てるような契約をすることで、会社に対する影響力を保持することができます。

③社長が死亡したときに信託を終了し、残余財産(株式配当を受ける権利)の帰属権利者である長男に承継させます。なお、残余財産である株式配当を受ける権利を長男が承継することは、相続税の対象になりますので、その点を考慮に入れる必要があります。