「いらない」「放棄した」は口だけじゃダメ

相続の話し合いの際に、「私、遺産はいらないから、他のみんなで勝手に決めて」「放棄したから俺は関係ない」などと言う相続人がいたとします。
この場合、口頭だけでは相続の手続きをすることができません。

「私、遺産はいらないから、他のみんなで勝手に決めて」

被相続人の遺産を相続しなくてもいいと思っているけど相続放棄(の申述)はしていない、という相続人は、原則として相続人全員で行う遺産の分け方の話し合い(以下「遺産分割協議」といいます)に参加しなくてはいけません。
相続人全員の協議が整ったら、その証として「遺産分割協議書」を作成して、相続人全員が署名、捺印(実印)のうえ、印鑑証明書を添えることで相続手続を行うことができるようになります。
このように、相続人の一部が「遺産はいらない」ということを口頭で述べるだけでは、相続手続をすることができず、そのことを証明する書面が必要になるのです。

なお、被相続人の生前に贈与を受けたので相続分がない場合は「特別受益証明書(相続分不存在証明書)」を、自身の相続分を他の相続人又は第三者に譲渡した場合は「相続分譲渡証書」を作成し、他の証明書類と合わせて相続手続を進めることとなります。
(※)「特別受益」「相続分の譲渡」については、コラムで後ほどご説明いたします。

「放棄したから俺は関係ない」

相続人が被相続人の遺産を相続しないという意思を「放棄したから」と表現されるのを何度か耳にしたことがあります。
この場合、実際に家庭裁判所に相続放棄の申述し受理されたのであれば、最初から相続人でないこととなり、遺産分割協議に参加する必要はありません。相続手続には「相続放棄申述受理証明書」を添付することになります。

しかし、遺産分割協議に参加するのが面倒だったり、被相続人や他の相続人と親交がほとんどなく関わりたくないため「放棄したから」と言っておけば何とかなるだろう、いうことであれば、家庭裁判所に相続放棄の申述をしていないと予想されます。
相続放棄は被相続人の相続を知った時から原則として3カ月以内に家庭裁判所に申述する必要があり、この期間(熟慮期間といいます)を過ぎると相続放棄の申述ができず、相続人であることが確定しますので、遺産分割協議に参加しなければなりません。
(熟慮期間については、家庭裁判所への申立てにより延長できる場合があります)

なお、夫が亡くなり、法定相続人が妻と子1人である場合、法定相続の第1順位である子が相続放棄をすると、第2順位である夫の直系尊属(父母や祖父母など)が相続人となります。
第2順位の相続人が全員死亡又は相続放棄をした場合は、第3順位である夫の兄弟姉妹(夫より先に死亡の場合は甥姪を含む)が相続人となり、どんどん相続手続の難易度が上がっていきますので、注意が必要です。